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アドボカシー方針について共同代表が想いを語りました

#Tokyo Pride

 東京レインボープライド(TRP)は昨年11月、公式サイトのお知らせページにおいて「Tokyo Pride 2025 協賛にあたってのお願い」を公開しています。また、協賛いただく企業・団体の皆さまには協賛申込フォームのなかで改めて、「TRPアドボカシー方針」にご理解・ご賛同のうえ、お申込みいただくようお願いしております。この「TRPアドボカシー方針」では、次の5つの項目を掲げています。

①全ての命と人権を尊重します。
②あらゆる暴力に反対し、許容しません。
③環境に配慮し、持続可能な社会の実現に貢献します。
④職場及び事業のすべての領域において、LGBTQ+の従業員をはじめとする、すべての従業員を平等に扱い、差別やハラスメントをなくします。
⑤本方針への賛同が、社内だけでなく社会の改革を促すことを意識し、行動します。 

 ここで、共同代表理事の山田 なつみと佐藤 ユウコが、なぜ「TRPアドボカシー方針」を設けたのか?について語る対談記事をお届けし、皆さまにその意図をご理解いただきたいと思います。併せて、今年6月に開催するコンテンツの総称を「Tokyo Pride(トウキョウプライド)」に変更したことへの想いや、今後TRPが目指すところについてもお伝えします。聞き手は、設立の当初からTRPを取材してきた当事者ライターの後藤 純一氏です。

「TRPアドボカシー方針」に込めた想い

―「TRPアドボカシー方針」を作成した背景や想い、意図についてお聞かせください。

山田
もともとTRPが大切にしてきた想いや取り組んできたことを、あらためて言語化したものが、この「TRPアドボカシー方針」です。私たちはいかなる差別もない平等で公正な社会を皆さまと一緒に作り上げていきたいと考えています。ですから、TRPが主催するイベントに参加される協賛企業と団体、大使館の皆さまには、法律上の性別、性的指向、ジェンダーアイデンティティ、性別表現、年齢、人種、国籍、宗教、出身地、障がいの有無、その他の特徴や属性に関わらず、誰もが安心して楽しめるイベントとなるようご協力をお願いいたします、ということです。

佐藤
公式ウェブサイトのお知らせや協賛申込フォームなどにも記載し、あらためてしっかり明記することで、LGBTQ+のことを含めた人権の擁護について、これまでよりももう少し強く、お約束といいますか、ご賛同をお願いしたかたちです。TRPに参加するということは、イベントに参加したら終わりということではなく、ふだんから職場でもLGBTQ+(をはじめすべての)従業員への暴力や差別をなくし、平等や権利回復を達成するための取組みにコミットしていこうとする意識や姿勢を持っていただけたらうれしいです。

―協賛を検討する側からはどのような反応がありましたか?

山田
「社内で確認するお時間をください」という企業はありました。それはきちんと「TRPアドボカシー方針」を受け止めてくださったからこそ、我が社は大丈夫かと確認しようと動いてくださったわけで、とてもうれしかったです。

―企業だけでなく、参加者の皆さんにも「【参加にあたってのお願い】特定非営利活動法人東京レインボープライドに関わるすべての皆さまへ」という「TRPアドボカシー方針」と同様のお願いを差し上げていますね。

山田
そうなんです。アドボカシー方針に賛同していただいた企業や団体以外にも、当日参加される皆さまにも、また、ボランティアの皆さまにもお願いしております。関わる人たちが全員、多様性の尊重や、暴力や差別やハラスメントの根絶といった共通の認識を持ったうえで、誰も嫌な思いをすることのないイベントにしていきたいと思っています。

佐藤
もともと当事者による当事者のためのイベントだった東京レインボープライド(今年からはTokyo Pride)ですが、大きくなっていけばいくほど、さまざまな方に参加していただくことになりました。可視化が広がっていくのは、大変うれしいことであるものの、「お兄さん」「お姉さん」などの声かけがあって傷ついた人がいたり、許可を得ていない個人を特定できる写真がSNSに投稿されてしまったりと、LGBTQ+コミュニティが安心して参加できるための共通認識が必要だと感じていました。Tokyo Prideは平等や権利回復を達成するためのイベントであり、その主役のLGBTQ+の皆さまが、安心して参加していただけるようにするために、具体的にどのような言動や行動がOKでNGなのかを改めて参加される全ての方々に知っていただくために、「参加にあたってのお願い(日本語版English)」を作成しました。今後、イベントが近くなったタイミングでSNSやYouTubeで発信し、当日も誰もが確認できるようにする予定です。

山田
呼びかけなどは、言った側も決して悪気があるわけではないと思いますが、何気なく発した言葉が相手に不快感を与えてしまう内容ということもあるので、双方がよりいいコミュニケーションになるよう、「参加にあたってのお願い」でより理解を深めていただきたいなと思っています。

―昨年新しい組織図が公開されましたが、「アドボカシー部門」が設けられたんですね。

山田
婚姻の平等をはじめ、法整備や制度など具体的な課題解決を目指すために、国内外のさまざまな団体・企業と連携し、ネットワークを活用した調査研究、情報発信、提言活動を行なっていく部門です。ワールドプライドを開催するInterPrideのミーティングに参加し、日本の状況を世界に伝えたり、来たる「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟大阪高裁判決に向けて、Marriage For All Japanと連携して違憲判決が出るような空気を醸成したり(*1)、さまざま活動しています。

(*1) インタビューが行われたのは2025年3月15日。その後、3月25日に大阪高裁では違憲判決が言い渡されました。

佐藤
私のバックグラウンドとして英語圏で育ったということがありまして、日本と海外の両者の視点から国内外のコミュニティの連携を広げていけたら、と思っています。

―アドボカシーというと、一般的には国や自治体に対してロビーイング(政策提言)していくイメージがあると思いますが、そういったことにも取り組んでいくのでしょうか。

山田
私たちはこれまでプライドパレード&フェスティバルを通してLGBTQ+当事者の可視化と権利回復のため活動してきました。ロビーイングを専門的に行なう団体ではないので、最も「得意なこと」で「できること」はあくまでも、社会を変えていけるような空気感を醸成していくことだと思っています。イベントを通して、法律を変えたいと願う人を増やしていったり、世論を動かしていくような取組みを軸にしていき、社会を変えるための土壌を整えることを目指しています。

佐藤
そういう機会が増えるようなハブ的な支援ですね。他団体が政策提言活動を行なう際には協力し、TRPもともに名を連ねたり。これまでもやったきたことなのですが、今後はより活動として力を入れていく予定です。

6月開催の「Tokyo Pride(トウキョウプライド)」について

―それでは、今年6月の「Tokyo Pride」についてお聞きします。昨年11月28日に、これまで毎年4月に開催してきたLGBTQ+関連イベント他、コンテンツの総称を「東京レインボープライド」から「Tokyo Pride(トウキョウプライド)」に改め、2025年6月に開催することを決定した、とのアナウンスがありました。プライド月間に開催することに異論はないものの、名称から「レインボー」がなくなったことに対して一部の方たちから批判的なリアクションも見受けられました。イベント名を「Tokyo Pride」へと変更した理由について、詳しく教えていただけますか?

山田
私はTRPが始まった2012年に初めてボランティアで参加し、翌年から運営に入りました。当時は企業に協賛のご相談に行っても「LGBTって何ですか?」って聞かれるような状況でしたが、14年やってきてずいぶん世の中にLGBTQ+のことを認知してもらえるようになりました。一方で、“LGBTQ+の問題が解決したらそれで終わり”ではないことにも気づきました。まだまだジェンダー平等も進んでいないですし、複数のマイノリティ性を抱えた人たちの課題は依然として厳しいものがあると身にしみて感じていて、LGBTQ+のイシューは大前提として、もっとインターセクショナル(*2)な取組みをしていかなくてはいけないという思いになりました。TRP=代々木公園でのパレード&フェスティバルというイメージがあるかもしれませんが、ほかにも年間を通じてさまざまなイベントや人権課題への取組みをしていくなかで、決してパレードのことだけを指しているわけではなく、プライドマンス全体に開催するイベントのことです、というふうに打ち出し方を変えたいと思いました。 

(*2) インターセクショナリティとは、人種、性別、階級、性的指向、性自認など複数の要因が交差(intersect)することによって、マイノリティの中でもさらに周縁化されるマイノリティの人々がいるということをきちんと捉え、そうした人々が直面する差別のリアリティに目を向け、支援していこうとする際のキー概念です。ダブルマイノリティ、トリプルマイノリティという言葉もありますが、インターセクショナリティは単に複数のマイノリティ性を抱えているということではなく、複数の要因が交差したところに生じる固有の経験、リアリティを重視する考え方です。

佐藤
今年から開催時期を6月に動かし、プライドマンスの1ヵ月間、代々木公園でのパレード&フェスティバルだけでなく、Youth Pride(ユースプライド)Queer Art Exhibition(クィアアートエキジビション)Human Rights Conference(ヒューマンライツカンファレンス)などさまざまなプライドイベントを開催しようと考えたときに、パレード&フェスティバルとTRPが同じ名前だと混同されやすいですし、ここで国際的に使われる名称に原点回帰してもよいのでは?ということです。

山田
東京レインボープライドの前に運営していた東京プライドについては、いろんな困難があり、続けることが難しくなったということは聞いています。当時運営に携わった方たちには頭が下がる思いですし、敬意も持っています。そうした方たちのパレードへの思いを無にしないためにも、毎年継続的に開催することを目指すTRPが立ち上がり、その際、東京プライドと区別するために、東京「レインボー」プライドという名前がつけられたのだと聞いています。佐藤も述べているように、もともと東京プライドという名称のほうが世界標準ですので、そこに戻そうということです。

佐藤
昨年、日本でプライドパレードが始まって30周年の節目を迎えたこともあり、もともとの名前に戻すには良いタイミングだとも思いました。いろんな歴史や世界のことを踏まえた名称です。なお、団体名は引き続き「東京レインボープライド」のままなので、「レインボー」という特別な名称は、私たちの団体名の一部として大切にしていきます。

―よくわかりました。今後、団体としてのTRPが目指すべきところ、次のステップや課題などについて、お考えがあればお聞かせください。

山田
引き続き、継続的に活動できるような運営を目指していきます。透明性を担保して、ミッションやビジョンをしっかり掲げて。今後は法整備など当事者の権利回復のための活動も強化し、コミュニティとよりいっそう連携を強めていきたいです。すべてはみんなが暮らしやすい世界を作っていくために。

佐藤
私が学生時代に参加させていただいたTRPの頃に比べると、ずいぶんLGBTQ+のことが世間に浸透してきたし、世の中変わってきたと実感しています。コミュニティにもいろんなレイヤーがあり、同性婚や差別禁止法だけでは解決できない、折り重なった複雑な課題があります。もっとインターセクショナルな課題の解決に通年で携わっていけるような進化を、みなさんにお見せできればと思っています。その第一歩がアドボカシー方針です。

―今年は海外のプライドのように、プライドマンスの1ヵ月間の間にさまざまな、Youth Pride(ユースプライド)であるとか、Queer Art Exhibition(クィアアートエキジビション)、Human Rights Conference(ヒューマンライツカンファレンス)などもあるということは皆さんにも伝わっていると思うのですが、メインのパレードですとか、代々木公園でのフェスティバルに関して、気になっている方も多いと思います。現時点でお伝えできることがあれば教えてください。

佐藤
Pride Festival(プライドフェスティバル)に関しては、ステージでパフォーマンスしていただく方を公募で募集していたり、Queer Art Exhibition(クィアアートエキシビジョン)でも当事者の方の作品を広く募集しています。コミュニティのメンバーをフォーカスし、可視化していこうという試みです。

山田
昨年はけやき並木にサブステージを設けましたが、今年はTRP主催のブースのなかでコミュニティのさまざまな団体が「LGBTQ+と○○」というテーマでトークをしていくようなことも考えています。

佐藤
それこそインターセクショナリティを軸にしていて、LGBTQ+当事者が抱えている複数のマイノリティ性に焦点をあて、課題の可視化と解決につながる内容にしたいと思っています。また、来ていただいた参加者の皆さんと団体の方たちがつながれる場になってほしいです。

山田
それから、Japan Pride Network(全国プライドネットワーク、略称JPN)のブースでは、全国のプライド主催団体が今年も出展します。自分の出身地にも団体があるというのは当事者にとっては心強いと思います。全国にプライドの活動が広がっていけるように各団体に寄付できる仕組みを考えていますので、ぜひ応援していだければと思います。

佐藤
推し活みたいな感覚で各地のプライドを応援できるかな、と。旅行も兼ねてぜひ全国のプライドにお出かけください。海外では、国や州など行政が、オーガナイズしているプライド団体と協力し、大規模にプライドが開催されています。今後、日本もそういうふうにLGBTQ+の存在が、国や地域を挙げて祝ってもらえるようなものになったらいいなぁという夢を抱いています。そのために、これからもTokyo Prideは進化を続けていきたいと思っています。

―いろいろな企画が進行中なんですね。楽しみです。ありがとうございます。

インタビュー日:2025年3月15日
文・聞き手=後藤 純一
写真=川島 彩水

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