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プライドパレードを知る

「プライド(Pride)」という単語は、英語の一般名詞で、「誇り・矜持」を意味しますが、それだけではなく、「セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)のパレード」を指すものとして、広く国際的に認知されています(パレード前後のイベントを含めた総称として使われることもあります)。
欧米諸国をはじめ世界の主要な都市では、この「プライド」と称されるセクシュアル・マイノリティのパレードイベントが恒例行事として、毎年開催されています。中には、ニューヨークやサンパウロといった、100万~300万人の動員を記録する巨大な規模のものもあります。

サンパウロのプライドパレードは、約300万人が参加するとされ、2006年にギネスブックによって「世界最大のプライドパレード」として認定されました。
『Parada do Orgulho LGBT de São Paulo』公式ウェブサイト
http://paradasp.org.br

ストーンウォール事件(Stonewall Riot)

今では世界各地で開催されている「プライドパレード」ですが、そのきっかけとなったのは、ニューヨークで起こった「ストーンウォール事件」でした。

1969年6月28日午前1時20分頃、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ地区にある「ストーンウォール・イン(Stonewall Inn)」というゲイバーに警察の手入れが入った際、その場に居合わせた「ゲイ」たちがそれに抵抗し、暴動を起こしたのでした(当時の「ゲイ(Gay)」は、今で言うところの「LGBTQ+」を包含する人たちのことを広く意味していました)
当時のニューヨークでは、警察によるゲイバーへの踏み込み捜査が定期的に行われていました。しかし、いつもなら警察に黙って従っていた「ゲイ」たちが、この日ばかりは果敢に抵抗し、警官に硬貨や瓶などを投げつけて暴徒化し、負傷者や逮捕者を出す暴動に発展したのでした。
この暴動は「ストーンウォール事件」として、その後のゲイ解放運動、セクシュアル・マイノリティの人権運動へとつながっていく転換点として、その名を歴史に残すことになったのでした。

『Stonewall Uprising』(2010年米)というドキュメンタリー映画の劇場用予告編

ジュディ・ガーランドの存在

その背景には、ゲイ・アイコンとして同性愛者に絶大なる人気を誇っていた女優、ジュディ・ガーランドの存在があったと言われています。

ジュディ・ガーランド(Judy Garland/1922~69):『オズの魔法使』(1939年)のドロシー役で大ブレイク。彼女が歌った劇中歌「Over the Rainbow(虹の彼方に)」は、今ではプライドパレードやLGBTイベントでは欠かせないシンボルソングとなっている。自身バイセクシュアルでもあ り、ゲイ・アイコンの代表的存在として現在もリスペクトされている。娘もゲイ・アイコンとして名高い、女優のライザ・ミネリ(『キャバレー』でアカデミー 賞主演女優賞受賞)。
事件直前の6月22日に彼女が急逝し、27日にはストーンウォール・イン近くの教会で葬儀が行われました。その夜、店内は彼女を悼む感傷的な空気に包まれ、そんな中での、日付が変わって28日深夜に行われた警 察の強引な手入れ。そのあまりに無神経な仕打ちに、居合わせた人たちの怒りは沸点に達し、逮捕者も出るほどの暴動に発展していったのでした。

ジュディ・ガーランド「Over the Rainbow」(映画『オズの魔法使』より)

翌年、1970年6月の最終日曜日、「ストーンウォール事件」の1周年を記念するデモ行進が、ニューヨークをはじめアメリカ各地で行われ、それがその後、毎年恒例となり、さらに世界中に広がって、現在まで続く「プライドパレード」につながっていきました。
6月にプライドパレードの開催が集中し、6月を「プライド・マンス(プライド月間)」と称するのも、こういう歴史があるからなのです。

左:現在の「ストーンウォール・イン」
右:2013年6月29日(土)、パレード前夜で盛り上がる「ストーンウォール・イン」。