TRPの企業講演はどんなもの?楽天での事例
東京レインボープライド(以下、TRP)は、企業や学校、自治体を対象に、LGBTQ+の理解を深めるための研修・講演を提供し、多様性を尊重し、受け入れることができる企業や組織を増やすことを目指しています。今回、2年連続でTRPの企業講演を活用している楽天グループ株式会社(以下、楽天)でDEIを推進する、コーポレートカルチャーディビジョン エンプロイーエンゲージメント部 DEIBグループの森 紗恵子さんに、企業講演の活用方法について寄稿いただきました。
1. はじめに
多様性が尊重され、すべての人が安心して過ごせる社会を目指すことは、企業が果たすべき重要な責任のひとつです。楽天では世界中の従業員一人ひとりの多様な個性と価値観を尊重し、誰もが能力を最大限に発揮できる環境づくりに努めており多様性は社会に新しい価値を生み出すイノベーションの原動力だと考えています。その一環として、東京レインボープライド(現:Tokyo Pride)に協賛企業として毎年出展しています。
TRPが主催するPride Festival & Paradeには5年以上出展しており、楽天の社内制度やサービスにおける取り組みの紹介、来場者に楽しんでいただけるようなアクティビティの提供などを通してLGBTQ+コミュニティーをサポートしています。また、Pride Festival & Paradeへの参加だけでなく、TRPが提供する企業講演も活用し、LGBTQ+に関する社内での認知や理解を高める活動も行っています。
本記事では、TRPに実施していただいた企業講演にフォーカスし、依頼した背景や講演内容などについてご紹介します。
社内におけるLGBTQ+への理解を促進したいがどこから手を付ければいいかわからない、TRPの企業講演でどんなことが実施できるのか知りたいという方はぜひご覧ください。
2. なぜTRPにお願いしたのか?
楽天は、TRPの企業講演を2023年から2年連続で依頼しています。依頼しようと思ったきっかけは、私自身が以前勤めていた会社で、TRPの企業講演にいち参加者として出席したことです。そのときの講師の方が、ご自身の子ども時代の経験を交えながら、LGBTQ+に対するインクルージョンの重要性をお話しいただいたことが非常に印象に残っていたため、楽天内で関係者と検討した上で企業講演を依頼することにしました。
LGBTQ+に対する企業講演を実施されている団体は他にもありますが、特にTRPの企業講演の魅力は「カスタマイズ性の高さ」だと考えています。
楽天の場合、社内公用語に英語を採用したことによる従業員の多様性の拡大や、「楽天主義」と呼ばれる独自の価値観・行動指針などのバックグラウンドや文脈があり、それらを汲みとった講演を一緒にご準備いただける点が、参加者の高い満足度につながっていると感じています。また、講演の形式もオンライン・対面といった選択肢だけでなく、双方向性を高めるためのアクティビティや当社従業員とのパネルディスカッションの開催など、柔軟にご対応いただける点でも大変助かりました。
講師陣も豊富にいることから、その時々のテーマに合わせた最適な講師の選定が可能であることも魅力に感じています。実際、2023年と2024年では取り上げたテーマが異なっていましたが、各テーマに合わせた最適な講師をご紹介いただくことができました。
3. どのような講演を行ったのか?
前パートでは「カスタマイズ性の高さ」を魅力としてお話ししましたが、楽天で具体的にどのような講演を実施したのかをご紹介したいと思います。
1年目:「インクルーシブな職場と心理的安全性」をテーマにしたウェビナー
初年度の2023年は、講師にインクルージョンセンセイ(INCLUSION SENSEI)代表の金 由梨さんをお迎えし、インクルーシブな職場を作るにあたっての心理的安全性の重要性についてご講演いただきました。
依頼時は、心理的安全性をメインテーマとしたい点や、(実際に参加者が知っているか否かにかかわらず)周囲に当事者がいることを前提としたマインドセットを醸成したいという目的をお伝えし、LGBTQ+に関する知識などベーシックな部分も押さえつつ、LGBTQ+非当事者でも自分ごと化して考えられる内容をお話しいただきました。
参加者が匿名で参加できるようなオンラインツールを使用し、実際に見聞きした差別経験や参加者が考える「ダイバーシティ」についての共有も可能となりました。このようにインタラクティブな講演を実施していただいたことで、参加者も自分ごと化しやすくなったと思います。
講演の実施後も、参加者からたくさんのポジティブな反応が寄せられました。
- 理解するのも大切だけれども、実践しないと職場環境が変わらないのだと感じた
- プライベートと仕事は関係ないと思っていたが、生産性やパフォーマンスに影響するということを学んだ
- (差別経験の共有があったことで)自身では気づかない違和感をシェアできる場となり、たくさんの学びを得ることができた
特に「インクルージョンを実践することと職場との関連性が見いだせない、必要ないのでは?」と感じていた方や、そういった発言を見聞きしたことがある従業員にとって、「インクルージョン=働きやすさやパフォーマンス向上につながる」ということが事例やデータを通して理解できたことは、とても有意義だったと思います。
2年目:「多様性を強みにするためのチームマネジメント」をテーマにしたウェビナー
2年目の講演では、特にマネジャー向けに、組織・チーム作りの観点でインクルージョンを実践することの重要性をお話しいただきたいとお願いしました。
そこで、TRPの経営企画/人事マネジャーでもあり、フリー株式会社でDEI Leadを務める吉村 美音さんをお迎えし、多様性に対する理解がチームマネジメントにどのように寄与するかというテーマでご講演いただきました。
アンコンシャス・バイアスやマイクロアグレッションにも触れながら、楽天の企業理念を体現するためにインクルージョンが必要であることなど、固有の企業理念やカルチャーに紐づけたお話をしていただきました。
また、後半では当社役員のティン・ツァイもパネリストとして登壇し、自身のチームメンバーにLGBTQ+当事者がいた経験の共有なども交え、チームマネジメントをする際に持っておきたいマインドセットなどを吉村さんとともに話してもらいました。
こちらの講演も、参加者から多くのポジティブな反応が寄せられました。
- 当事者への直接の発言でなくても、周囲でアンコンシャス・バイアスによる発言が出ることも問題だと再認識した
- 「一致団結*1」し、「大義名分*1」を果たすために「自分と他人は違うのが当たり前である」という点をより強く意識しようと思った
- 同質性が高い組織は弱くなってしまうこと知った
*1楽天のあり方を明確にすると同時に、全ての従業員が理解し実行する価値観・行動指針である「楽天主義」のうちの、ブランドコンセプトに含まれる2つの価値観。
今回はマネジャー向けの内容としてお願いしましたが、その点をカバーしていただいたのはもちろんのこと、楽天の指針である「楽天主義」に沿った講演内容をご準備いただいたことで、従業員にとっても共感しやすい内容になったと考えています。
どちらの講演も、100〜150名程度の方に参加いただき、「学びが多く、このような講演を継続してほしい」など嬉しい声が寄せられたため、主催者として大変満足しております。
4. おわりに
楽天が実施するDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)施策において、TRPが主催する各種イベントや講演は、非常に大きな役割を担っています。
本記事では、企業講演を中心に紹介しましたが、Pride Parade & Festivalへの参加についても、社外に向けた当社の取り組みの紹介といった観点に加えて、社内のエンゲージメント強化の一助にもなっています。例年、Pride Festivalへのブース出展では50名程度の従業員がボランティアとして参加し、Pride Paradeには約150名が参加しています。参加者からは、「楽天でのDEIの取り組みを肌で感じることができる」といった感想が寄せられています。
また、楽天においては現在社内向けのDEI施策に限らず、楽天が提供するサービスを通して多様なユーザーのニーズに対応する「サービスインクルージョン」の取り組みを推進しており、TRP 2023に出展した際も、当社のサービス改善を目的としてLGBTQ+当事者のニーズを直接聞けるようなアンケートを実施しました。その結果、ヘアサロン予約サイトの「楽天ビューティ」から「みんなのサロンプロジェクト LGBTQ+フレンドリーサロン虎の巻」という動画コンテンツをリリースし「楽天ビューティ」に掲載されるサロンにおけるサービス品質の向上に貢献しています。
今後もTRPが提供するイベントやコンテンツ、講演などの機会を継続して活用することで、社内外含め、多くの方に楽天のDEIに対するコミットメントを表明していきたいと考えています。
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